「選挙」は2005年10月7日から23日の投票日までのわずか2週間の間に、想田和弘監督が監督・撮影・録音をひとりで手がけて撮ったドキュメンタリー。
主人公の山内和彦氏は監督の東大時代のクラスメートだそうな。
ストーリー2005年秋、小泉劇場まっただなか。東京で気ままに切手コイン商を営む「山さん」こと山内和彦(40歳)は、ひょんなことから自民党に白羽の矢を立てられ、市議会議員の補欠選挙に出馬することになった。
政治家の秘書経験もない山さんは、いわば政治の素人。しかも選挙区は、ほとんど縁もゆかりもない川崎市宮前区。いわゆる落下傘候補だ。「電柱にもおじぎ」を合い言葉に、小泉首相(当時)や自民党大物議員、地元自民党応援団総出の、世にも過酷な「どぶ板選挙」がはじまった!はたして、山さんは勝てるのか?そして、選挙戦を通じて浮き彫りになる「ニッポン民主主義」の本質とは? (パンフレットより)
主な登場人物山内和彦(川崎市議会補欠選挙・自民党公認候補)
山内さゆり(山内和彦の妻)/小泉純一郎(総理大臣)/川口順子(元外務大臣・元環境大臣・参議院候補)/石原伸晃/荻原健二/橋本聖子 他
もともとドキュメンタリーが大好きなので、楽しみに試写会場の映画美学校(京橋)の試写室へ足を運んだ。
ナレーション、音楽、説明が全くない観察映画だが、それがまた選挙の過酷さや選挙の真実をより浮き彫りにしている。
ナレーションも何もない映画をはたして2時間も見続けられるかって?
そんな心配はご無用!
私は選挙戦終盤から投票結果が出るまでの間はホメオスタシスが同調してしまい、マジで心拍数が上がってしまった。
観察映画の手法が成功していることもあるが、山内和彦氏の人間にも魅力があるのかもしれない。
山内候補が戦う選挙は補欠戦で、他党と1議席を争う「自民VS他党」という構図のため、他の自民党市議たちも駆けつけて力を貸してくれるが、もし山内氏が当選すれば、次回の選挙は票を奪い合う者同士。そこには微妙な空気が漂う。
選挙事務所では応援のためにかり出された他の自民党市議の支援者のおばさんが、山内氏のビラを折りながら連立を組む党や近隣の人の悪口をこれでもかと話している。
落下傘候補として戦った山内候補夫妻には好感が持てたものの、何の基盤もない山内氏を応援するためにかり出された自民党後援者や候補には正直、いい感じは受けなかった。
でも、それが現実なのだ。
人や党のしがらみのドロドロした部分をこれでもかと突きつけられた感じ。
今はまだピュアな山内候補も、何年も選挙を戦えば汚れていってしまうのだろうかとちょっと心配になってしまったりして。
余談になるが、自分も昔、市会議員選挙の手伝いをしたことがある。
その候補も若い新人候補だったが、落下傘候補ではなく周囲に求められて立候補したこともあり、選挙事務所に詰めている人たちも後援者たちも候補に対してとても親身だったし、事務作業をしている人たちから近隣の人たちのうわさ話や悪口を聞いたこともなかった。無事当選を果たしたこともあるだろうが、選挙終了後には事務所には爽やかな空気さえ流れていた。
そんな経験があったせいで山内候補が余計に気の毒に見えてしまったのだった。
7月には参院選挙もあることだし、その前に裏側を見て楽しむもよし。
選挙の現実や裏側を知りたい人にはお勧め。
選挙の細かいことに興味がない人にも充分楽しめます。
そして、「選挙」を観たら夏の参院選、棄権しないでちゃんと投票に行こうぜ!
想田和弘監督、第57回ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品作品「選挙」は6月、
シアター イメージフォーラムでロードーショー。
想田和弘監督が好きなフレデリック・ワイズマンの作品
山内和彦候補は小泉ファンで候補者公募に応募したそうな